血液検査と感染症リスクについて
当団体では、譲渡する子猫に血液検査を行っておりません。これは以下の理由によります。
検査の信頼度の問題
あまり知られていないと思いますが、生後4ヶ月の子猫に検査をしても「猫エイズ・白血病」を検出できる割合は60%程度とされています。つまり、40%のキャリアの子猫には陰性の結果が出てしまいます。
より小さい子の場合、この検出率は更に低下します。
検査に信頼度を置くためには、完全隔離の状態で2カ月毎に検査を実施し生後6ヶ月以上まで再度検査をやり直す必要がありますが、それを待つと子猫の譲渡適齢を超えてしまうことになります。結果に責任を持てない時点で検査をしてもあまり意味がないのではないか、ということで当団体では検査を行っておりません。
費用の問題
私達が保護して里親さんに引き取りをお願いしている子猫は原則として行政機関から譲渡を受けたものです。これらの機関は猫の捕獲を行っていませんので、飼い主が処分のために持ち込んできた子猫達が大多数です。(野良猫の子供が持ち込まれるのは乳幼猫が多いため、生育出来ないケースが大多数です。ある程度の大きさになった野良子猫はなかなか捕獲できないからでしょう。)
先天的な感染率は5%未満と推定されますが、もし5%の子猫が感染しているとしてもそれを特定するのには全員の検査、つまり20倍の数の子猫をすべて検査しなければなりません。検査費用は1頭エイズと白血病で5,000円から10,000円かかりますので、1頭の感染猫を特定するのに大体100,000円から200,000円の費用がかかることになります。
その費用を捻出できるのであれば、それを更に多くの子猫の救護に回したい、と当団体が考えたところで里親さんに対し不誠実ではなかろうと思います。
生物を飼うということへの責任
生命に責任を持つ、ということは、その病気や怪我などのリスクも一緒に背負っていくことであると当団体は考えています。
「猫を飼って楽しい生活を送りたい、しかし病気は可哀想だし大変そうだから避けたい」では「命を助ける」という、当団体の活動理念からそれてしまいます。陰性の子猫の命と陽性の子猫の命はあくまで平等であり、平等に生きる道を与えられるべきでしょう。
私達が里親希望者の方にお願いするのはまさしく生き物と一緒にリスクを負っていくということであって、縁のあった子猫へのリスク分担をお願いしないことには、捨てられた犬猫の譲渡活動自体が成り立ちません。感染症の猫を引き取るリスクを減らすことを優先するのであれば、販売業者からの購入をお考えいただきたいと思います。
また、検査段階で白血病もしくは猫エイズと判明したところで、そのまま飼い続けるしか方法はありません。これらの病気は必ずしも発症するものではなく、通常の生活をしながら天寿を全うできるケースも多いことはご存じの通りです。費用のことだけでなく、以上のような理由からも私達はエイズ・白血病検査を必ずしも必要であると考えずに見送ることにしています。
その他の感染症のリスクについて
私たちは健康と判断された子猫を譲渡していますが、中には譲渡段階で発見できない母子感染症……主としてFIP(猫伝染性腹膜炎)等のリスクもあります。将来的な発症リスクはゼロではありません。
FIP.は感染していない(今後発症の危険性が無い)がどうかの見極めが事実上不可能で、前述の感染症同様に定期的なFIPの全頭検査の実施は現実的ではありません。発症時点で獣医が総合的に診断しますが、現況感染の兆候は見られないからといっても今後発現する可能性はありますし、または既にキャリアである可能性が排除出来ません。何才になっても他の病気などで免疫力が低下した時などには発症することがあります。
子猫が元気であってもFIPキャリアで他の猫への感染源になる可能性が低いもののゼロではありません。ただし、FIPは猫に限られた感染症で人間や犬などには絶対に感染しません。
※上記をふまえた上で血液検査済みの猫をご希望の場合
主として6か月以上の猫の積極的救命のためのFeLV/FIVチェックのご希望ではご事情毎に対応いたしますのでご相談ください。